デネブとアルタイルとベガ




星座は結構とんちんかんだから10月になっても夏の大三角形が見えるし、冬じゃなくても冬の大三角形が見えたりする。神話の神々は人間味に溢れてるからそこんところ笑ってごまかしそうな気がする。

飲み屋の光でピカピカ眩しい下北沢、酔ってふらふら歩く人たちにぶつからないように天を見上げると大きな三角形が見えて嬉しくなった。




今日は久しぶりにセンチメンタルになった。その後自分のアホさが爆発して念願の弾き語りライブに遅刻して泣いた。なんとか辿り着いたバーで、私が見たかった憧れの人にその話を笑い話にして話した。で、泣きたくなるほど温かい言葉をもらってまた泣いた。




私は大学2年くらいから、映画のチケット、旅行先の入場券とかを貼るアルバムを作っている。そういえば最近貼り付けてないな、と思って、覚悟を決めて開いた。今の彼氏とこの前旅行した時の諸々のチケット類を貼りたくなったから。そうしたらぶわ〜っと溢れてきた前の人との思い出。

そう、私たちはたくさんの場所に出かけたんだった。関西、広島、沖縄、北海道、3年間2人で過ごした間にたくさんの場所に出かけて、“この人とこれて良かった”って心の底から思ったあの日々を思い出してしまった。これをアルバムに貼るとき、“2人でいつか見返して思い出話をしよう”と思って、チケットには一言二言そえていたことも。


今までのページを全て破って、チケット類をその古いページから引き離して、また新しく作り直すことにした。もうそれは“彼氏との思い出”ではなく“私の大学生活の思い出”に訂正して作り直すことにした。今の彼氏との思い出もこのアルバムに残したいからね。


各地方の入場券とかチケット、2人分並べて貼っていたものを一枚だけ引き離して、新しいページに貼り続けた。ほんとに最近、昔の恋を思い出すことがなくて“私って薄情なのかな…”とか思っていたから、これを開いて溢れ出てきたセンチメンタルに自分でも驚いた。あぁ私、この人のこと好きだったよなぁ、3年間、私の大切な歴史だなぁ、たくさん出かけてたくさん笑って、いつでも楽しい2人だったなぁ。 

敢えて普段来ないような駅から遠いカフェに来ていたから、アルバムの古いページも、それに一枚ずつ残ったあの人の分のチケットも、カフェを出るときにゴミ箱にねじ込んだ。たぶんこの先このアルバムを開いても、このセンチメンタルは香らないだろう。全て私ひとり分のチケットだし。一言もメモを添えていないし。もう来ることがない場所に、もうこの先思い出すことのない記憶を捨ててきた。この先は今の彼氏と思い出を増やしていくんだ。




その後私のうっかりでバーを間違えて、“ここか?”と思って開けたドアはキラキラした美容院で、もうスタートの時間を過ぎていたし、“楽しみにしてたのに今日間に合わないじゃん…”って道端で泣いた。アホか私は。一駅ぶん走って走ってなんとか目的地について重たいドアを開けたら憧れの人が“それでは二曲目”ってちょうど喋ってた。後から聞いたらどうやら私がまだ来ないから10分待っててくれたらしい。優しすぎる。

その人の歌を聴くと、自分がすでに忘れたと思っていた郷愁の思い、昔の恋への温かい気持ち、そういうのを思い出して優しくなれる気がする。ファンへの向き合い方も一流で、遅れて入った私に話しかけてくれたり、帰る間際にメッセージ付きの歌詞カードをくれたりした。最後色々話したとき、「道を間違えてもきちんとここに辿り着いたように、しっかり前に進めてるんだね。」って優しい目で言ってくれて力が抜けそうになった。

最寄りのコンビニに飛び込んで買ったマヌカハニーののど飴と写ルンですを差し入れた。この人もこの人のバンドも、これから先ずっと応援していたいな。大きくなってもならなくても、健康に元気に歌を歌っていてほしい。


人のあったかい部分に直に触れて、今夜はものすごく満ちている。 私は前に進めている。