全てがアホくさい夜に





11倍なんて倍率も、浮気に加担してのこのこ今でも生活しているあの女も、女子アナ目指してキラキラしてたあの女も、3周してもなお間違えちゃう過去問も、目を通さなきゃいけない施策も、1年後の私も、全部アホ。もうどうなってるのこの世界。なんで私がプレゼントしたピアスを、別れたアホ男はあの女の家に忘れたの。なんであの女と出かけた時に買ったアウターを私との3年記念の旅行に着てきたの。なんでそんな人たちと同じ世界線で生きていかなきゃいけないの。

全部勉強ほっぽり出して泣きたくなる。誰かと心を通わせたい。幸せになりたいけど幸せのビジョンなんて見えない。

明日やらなきゃいけないこと全部やらないで、生存確認の電話にも出ないで、ただテレビを流してご飯食べて1日過ごしたら何かが変わるのかな。私は何か1つを“やらない”と選択するだけで生活を変えることができる。でもそれは他の人も同じで、やりたくないけどやらなきゃいけないことはたくさんあって、それをやらなかったら楽になるけどみんな頑張って毎日生きてる。朝の満員電車に乗らない、1限のために起きない、試験のために勉強しない、バイトの為に30分前に家を出ない、そういう選択をするのは簡単だけど、みんなきっとギリギリのラインで踏みとどまって、考え直して、いつも通り満員電車に乗るし1限のチャイムがなる頃には席についている。すごいことだ。

そういう世界から離脱したくなったらどうすればいいかな。



こんな邪悪でダークで非生産的な夜にかろうじてある希望、それは食パン。

5枚切りの食パンを買った。5回分の朝ごはん、パンに何を乗せよう、どうやって食べよう、と考えるのが唯一のわくわく。朝ごはんを食べる頃にはこのアホみたいな気持ちもどこかへ行ってるといいな。



1人の生活は気ままで楽しいけれど、たまにとことん寂しくなる。

高橋優はそんな気ままな一人暮らしを軽快に歌ったけど、実はあの曲の中に寂しさが紛れ込んでいることを私は知っている。

全てがアホくさいと感じる夜だけれど、もしかして全てが寂しい夜ってことなのかもしれない。